ジブリの新作「思い出のマーニー」が話題になっています。

思い出のマーニー感想

「借り暮らしのアリエッティ」の時もそうでしたが、
スタジオジブリが原作に選ぶ児童文学は名作が多く、
読んでみて外れていた事はありませんでした。

今回の原作も面白そうです。
さっそく読んでみる事にしました。

お話のネタバレを含むのでご注意下さい!

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養い親のもとを離れ、転地のため海辺の村の老夫婦にあずけられた少女アンナ。孤独なアンナは、同い年の不思議な少女マーニーと友だちになり、毎日二人で遊びます。ところが、村人はだれもマーニーのことを知らないのでした。
(Amazon内容説明より)

映画では主人公のアンナは日本人、場所も北海道ですが、
原作では舞台はイギリスのノーフォーク地方です。

初めの1章くらいは話の動きがゆるやかですが、
そこを越えて後半に入ると次々と展開が進み目がはなせません。

そして驚きの結末が明かされます。

でも、驚きは物語の伝えてくれる事の結果付いてくるだけで、
どんでん返しがこのお話の目的という訳ではありません。

イギリスでは児童文学の古典的名作として長く親しまれている
作品だそうです。


 

アンナの両親は、アンナが物心つく前に離婚してしまいました。
父親は音信不通になり、アンナを引き取った母親は再婚直後、
交通事故で亡くなってしまいます。

身寄りの無いアンナを母方のおばあさんが引き取りましたが、
おばあさんも体をこわして病院に入った後、亡くなりました。

アンナはプレストンさんという夫婦の養女になりました。

でも、信頼したかった大人たちが立て続けに自分を置いて
いなくなった事で心に孤独感を抱えるようになっています。

誰かから愛情を受け取った経験がまだないのです。

そのせいか養父母ともうまくいきません。

養父母はアンナを心配して、郊外の知り合いのところに
預けて気分転換をさせることにしました。

 

預けられた先のペグさん夫婦のところでも、
アンナはなじめなさを感じています。

そのとき、「しめっ地屋敷」と呼ばれる古いお屋敷を見つけ、
なぜかとても心をひかれます。

しめっ地屋敷
公式サイトよりしめっ地屋敷

『これこそずっと探し求めていたものだ』と
お屋敷をみつけたアンナは直感しました。

お屋敷を眺めに行く日を繰り返すうちに、
アンナは自分と同じように孤独な少女マーニーと出会います。

 

マーニーは空想の中から出てきたような、
でも現実にちゃんといる女の子でした。
アンナとマーニーはお互い欲しがっていた秘密の友達になりました。

二人は同じ心を持っているかのように気があったのです。

マーニーと友達になってから、
アンナは楽しさというものを知るようになり
心もだんだんほぐれて行きます。

でも、ペグさん夫妻も村の人たちも、
マーニーとその家族の事はいないと思っているようなのです。


 

読んでいる内に、マーニーはアンナとは違う時代の女の子では
ないかと思われてきます。

ばあやと女中に世話をされていたり、家庭教師がいたり、
お屋敷では着飾った大人たちがパーティーを開いていたり、
少し昔のお金持ちの子という感じです。

アンナもマーニーはどうやら華やかな世界の女の子らしいと
気がつきますが、時代の違いまでははっきりわかっていません。

 

原作では同じ国の時代背景の違いだけが仄めかされていますが、
映画では日本の女の子と、どう見ても外国の女の子との交流です。

どういう風に表現されるのか、
映画と原作との違いを見比べてみるのも楽しみですね。


 

マーニーとアンナはお互いの心の秘密も打ち明け合います。

アンナは家族において行かれたと感じていた事、
お母さんもおばあちゃんも自分を置いて行ったと思っていること、
自分でも自分が嫌いなことをマーニーに話します。

一方、華やかな暮らしをしているようにみえたマーニーも、
実はそうではありませんでした。

マーニーの両親はマーニーに興味が無く、
ばあやも女中もマーニーにつらく当たっていたのです。

マーニーは離れたところにある風車をとても怖がっていますが、
それは小さな頃女中に風車に閉じ込めると脅かされたせいです。

脅かされておとなしくする生活に慣れているのがマーニーでした。

見かけは恵まれていても心のささえになる人がいた事が無く、
そのせいで自分が追いつめられていることにあまり気付けません。

何かを読み取る力が無いのはアンナと同じです。

アンナとマーニーは初めて心を打ち明けられる相手として
永久に親友である誓いを立てます。

 

そして、アンナとマーニーの友情にヒビが入る事件が起きます。

アンナは、マーニーがあんなに怖がっている風車を調べようと
出かけて行きます。

風車の中は不気味なところでアンナも早く逃げ出そうとします。

ところが、そこにマーニーがいたのでした。

マーニーは風車への恐れを克服しなければならないと思い込み、
やってきたのですが、恐怖のあまり動けなくなっていました。

アンナは勇気を出してはしごを降りて風車から出よう、
とマーニーに呼びかけますが、恐怖に取り乱したマーニーは
言う事を聞いてくれずその内眠ってしまいます。

マーニーを置いて行けないアンナは不気味な風車の中で
帰れないでいる内に自分も眠ってしまいました。

でも、アンナが目を覚ましたときマーニーはいなくなっていました。

マーニーを探しにきてくれた人とマーニーの声だけが
遠くから聞こえました。

アンナはマーニーが自分を置いていったのだと思い、
激しく傷つきます。


 

マーニーを失った上、体を壊して寝込んでしまってから、
アンナは初めて周りの人たちに助けてもらいます。

自分のことを心配してくれていたんだということがやっと
理解できたアンナ。

 

でも、マーニーの裏切りは許せません。

それでも「しめっ地屋敷」を見に行くと、
マーニーとの最後の別れが待っていました。

マーニーは風車から助け出されてから閉じ込められていたのでした。
もうじきよそへ移されてしまうことに決まったのです。

マーニーは窓からアンナに必死で謝ります。

『ごめんなさい!あんな風にあなたをおいてきぼりにするつもりはなかったの。あのことで、あたしずっとここにすわって泣いていたの。アンナ、お願い、許してくれるって、言って!』

・・・まるでその言葉はアンナ自身の中から聞こえてくるようでした。
風と雨にもかかわらず、マーニーの言葉はとてもはっきり聞こえました。

アンナがマーニーに対して抱いていた激しく苦い恨みは、あっというまに、すべて溶けさっていました・・・

『もちろんよ!もちろん許してあげる!あなたがすきよ、マーニー。あなたを忘れないわ。』

それから、アンナがマーニーと会う事はありません。
アンナの中でマーニーはすぐに幻のようになっていきます。


 

マーニーと仲直りし、周りの人たちのことも理解できたアンナは
やっと心穏やかになりました。

マーニーがいなくなった後のお屋敷には
5人きょうだいのリンゼーさん一家が引っ越してきます。

リンゼーさん一家は村の人にもちゃんと見えているのです。

アンナは5人きょうだいと友達になり、
家に招かれ本当の家庭の雰囲気を体験します。

その頃にはアンナは不思議だったマーニーのことを
こう思うようになっていました。

『あたし、マーニーなんて人はいないんだと思う。マーニーは、一種の、そう、空想の中の女の子なんだと思う。』


 

空想の友達と離れ、現実の世界で友達ができ、
養父母とも理解し合ってめでたし
で終わるのかと思ったところで真実が明らかになります。

お屋敷から、マーニーという少女が書いたらしい昔の日記が
発見されるのです。

マーニーは50年以上前お屋敷に実在した子でした。

マーニーは成長して結婚し、エズミーという娘を生んだ事、
エズミーは女の赤ちゃんを産んですぐに事故で亡くなった事、
孫にあたる赤ちゃんを、マーニーが引き取った事が判明します。

その赤ちゃんがアンナだったのです。

アンナが、自分を置いて行ったと考えていたおばあちゃんが
マーニーでした。

お屋敷は、物心つく前のアンナとおばあちゃんになった
マーニーが一緒に暮らしていた場所だったのです。


 

この事実が明らかになるとマーニーの最後の言葉、

「ごめんなさい!あんな風にあなたをおいてきぼりにするつもりはなかったの。許すと言って!」

というのが深い意味を持っていたのがわかります。

アンナを残して先立たなければならなかったおばあちゃんからの
メッセージとも言えるでしょう。

それをやっと受け取れたので、アンナは心をとかす事ができたのです。

マーニーというのは実在したけれど、
アンナの言う通り、空想の中の女の子でもあります。

このお話はアンナが自分の心を旅した話だと思います。


 

映画では、怖い風車は北海道の土地に合わせてサイロになっています。

原作とは別の作品として楽しめそうですね。